情報科学の面から東日本大震災を振り返る

電子情報通信学会誌の今月号(Vol95,No.3,平成24年3月)は、東日本大震災の特集だった。興味深い話がいくつかあったので紹介する。

*ところどころ、上記の文献からの抜粋も含みます。

東日本大震災における通信衛星 WINDS 等の活用状況

2008年に超高速インターネット衛星 WINDS の名前が「きずな」なんだそうで。下り最大155Mbps(下り)の通信可能。筑波宇宙センターと接続され、そこからインターネットに繋がる。震災当時は岩手県庁本部などに回線提供した。HDTV品質のテレビ会議システムが可能。

東日本大震災とオンラインコミュニケーションの社会心理学−その時ツイッターで何が起こったか−

地震発生から1時間以内に毎分1,200件のツイートが投稿、24時間で「地震」を含むツイートが24万6,075件。サーバーダウンはなかった。

トラウマ的なできごとには「書く」ということで健康が増進する。筆記療法とも言うそうで、つぶやきはそれにあたるのではないか。

特定の検索キーワードを含むツイートを30秒おきに検索・収集するソフトで、TTTというのがある。不安を表すツイートが多い、911の場合は、怒りに関するものが多かった。

オフラインケータイ−通信不能下での携帯電話機による情報収集交換技術−

下記のように、通信不能なケータイをどうやって活用するか。

  • 電子貼り紙「パッシブRFID」の利用。電子マネーですでに実用化されている。
  • 自律測位。端末単体で測位計算をし、情報収集する。
  • アナログFMやワンセグ。

災害に強いネットワークに向けた研究開発

ルーチングなどの仕組みの観点ではなく、基盤設備(ハード)に目を向けたはなし。伸縮性のある管などを使用する。アンテナを小さくする、など。

将来の災害に備えた新たな情報通信技術体系

災害直後3時間の情報通信コンテンツは

  1. 見たことや起こったことの個人による放送型報告
  2. 安否確認などの個人コミュニケーション
  3. 公共情報への能動的アクセス
  4. 公共情報への受動的アクセス

に分けられる。これに足しては、1はSNS、2はSMS、3はHTTP、4はワンセグなど、同報型のパケット通信で実現された。結局のところ、放送網、キャリア、インターネットインフラ全てに対して対策が必要だ。

惑星間インターネットの応用。接続性を前提にせず、接続性があれば通信を完成させる「日和見形ネットワーク」=ノード間の接続に遅延や分断が頻発する環境を想定しておく、という前提のネットワーク。

 

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とまぁ、問題は山積だが、あの日から1年、我々のような技術屋でもできることは何か、改めて考えたい。